My Studio & Instruments


[Studio] #My Rack1. Master Section Rack

  •  WRITER : admin
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    20-05-08 17:54  

 

前回までスタジオ全体や、モニター環境等を紹介してきたので、ここからはいよいよスタジオ心臓部=メインの話。

スタジオの主要ラックに収まっている機材達が主人公、それぞれに大切な役割があって、もちろん思い出もたくさん詰まっている。

それではラックごと、順番に紹介していきたいと思う。まずは#My Rack1からスタート。

 

#My Rack1 Master Section Rack



 

ここを本格的にレコーディング可能なスタジオとして稼働しはじめたのが2004年リリースした5枚目のソロアルバム「ECHOES」からなんだけど、そのきっかけとなったのが、それまで東京など各地レコーディングスタジオで実際通常触れ合い、目にしていた音響機材達。エンジニアさんがレコーディングで様々な音を録音したり、ミックス時に使用していたのは日常だったけど、当時録音機材自体に大きな関心はなかった。ところが97年から始まったロンドンレコーディングで、訪れる度現地で生まれる音に惹かれ、通常の録音と何が違うのだろうと関心を持ち始めた。アビーロードスタジオはじめ、各スタジオ所有のVitage機材を実際目にし、耳にした事も大きなきっかけになったと思う。そうか、だからこういう録音機材が大きなレコーディングスタジオに常設されているんだな!と合点がいったとともに、自分もそれが欲しくなってきてしまった^^;

 

そんな関心が芽生えはじめていたアルバムECHOES製作時の2003年、いつものように山中一人で作業していたがそんなある時「よし、このスタジオで最後まで自力で仕上げよう、もちろん最終段MIXまでやる!」と決断した。レコーディングの初期段階;曲作りの段階から機材を集め始め、それ以降製作とスタジオ整備の両方が同時進行した。ただ、開始当時は試行錯誤の連続・エンジニア友人にここに寝泊まりしてもらい、手取り足取り教えてもらいながら正に共同作業の毎日。失敗も後悔もたくさん経験しながら一歩一歩進んでいった。なので完成まで、普段のレコーディング製作所要時間を大幅に上回ってしまったけど、それだけに本当に思い入れのあるアルバムになった。

 

 

#Rack1 Master Section Rack

このラックは作業の2ミックスに仕上げる際のMaster Compressor & Master EQが収まっている。それまでせっせと行ってきた楽器などのレコーディングが2MIX完成間近、最後の仕上げ部分>>Masterという名称がついていて、いわゆる一番信頼の置ける機材達。

 

ラックの一番上は泣く子も黙る?GMLのEQ(equalizer) GML 8200。

一流エンジニアGeorge Massenburgが作り出したブランドメーカーGML。電源部がセパレートされていて、これを通るだけでもわかる音の存在感は圧倒的。僕には自分なりの基準があって、その機材に音が通り、何か動作させた時、その行為が音に反映されて納得できる。つまり回したツマミとそれによる出音の変化がリンクしている場合、それは自分にとって最高な相棒になる>>これは正に楽器と同じ。この場合、EQポイントを微妙にずらしてつまみで増減した時、それが手にとるようにわかる機材で、当初は感動したのを記憶している。このEQが使われ、世界中の名作が誕生したと言っても大げさではないくらい、使われた&使用されている銘機。ピアノの高域をほんの少し持ち上げただけで、気持良い塩梅になってくれたり、信頼度めちゃ高いFirst CallのEQ。

 

2番目、今ではすでにビンテージの領域に入るかもしれないけど、当時はまだ現行販売されていたSSLのXLogic Super Multichannnel Compressor。これの母体は当時どのスタジオにも配置されていたSSL9000コンソール最終段に入っていたステレオ仕様のG-Compをラックに抜き出したもので、当初はそれを使っていたんだけど、あまりに気に入ってしまいそのマルチチャンネル仕様(サラウンド対応):このMultichannel Compressorにグレードアップした。次に登場するNEVE33609に比べると少し現代的というかスッキリした味わいで、美しく「間違いなく」仕上げてくれるオールマイティな存在で、単体の楽器収録にも当然使います。作る音楽のタイプによってこのSSLとNEVEを使い分けている感じです。

 

3番目は、こちらも泣く子も黙る(^^;)OLD NEVE 33609 Compressor。ビンテージ機材の代名詞になってしまったOLD NEVEの中で通称33609で親しまれている機材。こちらはビンテージフリークの中で意見が色々と分かれるところだけど、発売当初33609aという型番で始まり、順にb,cと進む。そしてその後はなく、20年ほど前突然そのレプリカが出て名称は33609J、おそらく今も販売されているはず。しかしそのJ、中身と音は残念ながらあの時代とは全く別物、だって当時のパーツはもうないし、それを代用したところでやはり結果は見えている。僕は33609を2台所有しているんだけど、ある時期自分の中で33609ブームがあって、病的に33609にこだわった(好きになった)時期があって、数台手元においてその中で本当に気に入ったものだけを残している。これはそんな経緯でここにいる少し古い方の33609。aとbの中間ほどの時期のもので相当古いはずだけど、現役バリバリ。用途としては多岐にわたるけど番多いのはマスターコンプとして2ミックスの仕上げ段階や、ドラム&パーカッションミックスでの活躍。最近のハリウッド系Cinematic Percussionにも威力発揮で、その他もちろん各楽器、単体の録音にも最高。ロック系の人が好んで使うのは常套だけど、ロック系だけではなく、この33609を通過することで大英帝国の気品と鋭気を授かり音が瑞々しく溢れて出てくる>ちょっと大げさ^^; >でもあながち間違っていないと思う。実は最近少し不調だったけどメンテナスしてもらい、元気に復活!

 

4番目はこれら機材をつなぎ替える際のパッチベイ、どんな組み合わせもガッチリと安全につないでくれます・

外観からすでに頼もしい。

 

 

このラックには以上3機種が収納されている。5枚目のアルバムECHOES話が出たついでに。

アルバムでは東京、ソウルでのミュージシャンレコーディングに加え、この時のロンドンレコーディングは初めてRoyal Philharmonic Orchestraとのセッション&Angel Studioでレコーディング。共に初の組み合わせだったけど色んな意味で素晴らしく、、Angel StudIoはそれ以降のロンドンレコーディングの定番愛用スタジオになっていった。そして、その録音素材を持ち帰りこのスタジオで初めてMIXを手掛けた、、本当に夢中で試行錯誤したけど思い出に残る作品になりました。

 

さて今回はマスターセクションを担当するラックので紹介でいきなり心臓部からドン!と行きましたが、

次回以降も色んなシーンで活躍する魅力的な機材群紹介していきますので、どうぞお楽しみに^^

 

梁邦彦