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音流、すべての間に流れる思惟の時間 / ソウル国立中央博物館 11月3日〜 5日 ライブ

  •  WRITER : admin
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    23-11-14 16:21  

 

昨年9月慶州博物館において、仏像の前でバイオリン、チェロ、ピアノと言う編成で、YouTubeオンエアのため演奏する機会があった。今まで数多くいろんな場所で演奏してきたけれど博物館の中、歴史的遺物の前で演奏すると言うのは、まさに初体験。非常に新鮮でいつもの公演会場とは違う空気感で聴衆がいない分、空間から跳ね返ってくる反応がとても新鮮で新しい扉を開いたような感覚だった。

 

そしてその後ソウルの中央博物館においても同じ形で演奏する演奏機会が予定されていた。しかしソウルでの遺物は特別であった。第1級国宝、2体の半跏思惟像 ;弥勒菩薩の展示された「思惟SAYUの部屋」で演奏すると言う企画だった。あそこで演奏できるんであれば本望だ!と思っていたところ、やはりその展示場においての演奏会はいろいろな制約から不可能と言うことになり、昨年の企画は一度流れた。しかしその後別の要件で博物館を訪れた際、この展示;思惟の部屋に入り思わず出た言葉が「やっぱりここで演奏したい」 その場でその言葉を聞いた博物館スタッフの方が、それでは博物館の劇場「龍」でこの展示と連携した企画公演をやりましょうと、ほぼその場で決定したという流れで今回の11月3日〜「音流」公演につながった。 

 





 

企画公演の場合当然、思惟の部屋をテーマにした音楽を演奏する、つまり新曲を作り初演というのが大前提となったが、その瞬間ふと「これだけのテーマを扱うのであれば、しっかり音源を残し、皆さんに聞いてもらいたい」と思った。その思いは自然に口から出て、その場にいたスタッフ全員が大きくうなずいたのをよく覚えている。それが春先頃の話。更に11月を到着点とし、そこに至る伏線も話し合い6月&9月には劇場「龍」ではなく、広い博物館ロビー及び野外広場でのライブが企画されそれぞれが行われて、11月本公演につながった。

 

新楽曲について、

コンサートの前提となる「思惟の部屋」楽曲を 作る過程が今までとは大きく異なり、正直一筋縄でいかなかった。

映像作品やイベント;締切のある音楽制作をたくさん経験してきたけれど、大きな山が遠くに見えそこに向かい登っていく過程で、今回のように山頂は見えるのにそこに至る道筋が見えず、 登っては降り、降りては登ってを繰り返すという行程は初めてかもしれない。僕の至らなさもあるかもしれないけれども、やはりこのテーマ自体が深遠で、どれが正解か、どこが到達点がどこなのかがよく見えない状態が続き時間は過ぎ、、かたやライブをやり他の制作もありで、時間はどんどん過ぎていく。遠くにあった山頂が近付いてくるけど、登っていく道が見えて来ず気持ちも焦りはじめたそんなある日、ふとしたことから「そうかこの状態が考えると言うこと、すなわち思惟なのか」と思うにいたり、人それぞれが考える事、結局1つの絶対的な答えはないと分かった瞬間、 目の前が明るくなった。深く考え複雑に盛り込みすぎる、それを排除する、そして必要なものだけが残る。この過程自体も正に思惟なのだと。これが入口のドアが大きく開いた瞬間。そこから矢継ぎ早に浮かんだアイディアを繋いでは、排除する行為の繰り返し。徐々に姿を見せ始めてくれた半跏思惟像 ;弥勒菩薩。徐々にいろんなものが目の前に広がってきて、これはたった1曲で僕がすべてを語り切れるものではないと言うことも見えてきた。つまり言いたいことが山ほど出てきた。でも、メインテーマにすべてを注ぎ込むのではなく、メインテーマを提示し、そこから物語がスタートすると考えると、大きく合点が行き作業が本格的にスタート、そこからは時間との戦い:これはいつもの事だけど^^;

 

それが9月の中旬位、しかしその頃には矢継ぎ早にライブがあり、日韓往復も多く、今度は実際作業する時間がなかなか見つからず、、、移動時や待機時の作業時間がとても大事だと実感し、その方法と対策も入念に考えた。現実的にはライブやりながら、その合間に音源のレコーディングを進める。ならばライブメンバーがレコーディングに参加してくれることがベストと考え、可能な範囲で極力その方法で進めた。メンバーにも無理を言ってしまったけれど。

 

今回音源リリースした3曲

1、SAYU ~ Main Theme ; SAYUの顔となるメインテーマ

2、Rainbow Reunion ; 虹の橋の上での人との出会い、再会。

3、The Hidden Gate ; 誰も気がついてない、すぐそこにある異世界、次の世界への扉。

各曲それぞれ役割があって、The Hidden Gateはとても大事な曲になりそう。。また次の世界へ、その世界は一体どこへ

 

話はライブに戻って、参加メンバー達もそれぞれの思いで素晴らしい演奏と気力で参加してくれました。クリスくんは4年ぶりで日本から参加してくれたし、パクサンヒョンくんは通常ギターに加え、マンドリン&ギタレレまで、、、。イチェさんも素晴らしいバイオリンに加えマンドリンまで。その際本来のバイオリン役割をビオラのパクヨンウンさんが頑張ってくれたり、アコースティックとエレキの両方で底辺を支えてくれたジョフチャン君、SAYUのメインテーマを情緒豊かにチェロで奏でてくれたナイングク君、初参加で頑張ってくれたフルートのオアラさん。お疲れ様でした&ありがとう。

 

梁邦彦(Pf)、カン·イチェ(バイオリン)、パク·ヨンウン(ビオラ)、ナ·イングク(チェロ)、オ·アラ(フルート)、パク·サンヒョン(ギター)、チョ·フチャン(ベース)、クリストファー·ハーディ(パーカッション)

 

今回公演の大きな特徴として、純粋な音楽コンサートと言うより、思惟の部屋を巡り多くの人に想起される各自のストーリーを音楽と関連付けその流れを演出すると言う大きな役割を担当してくれた、演出監督2018平昌オリンピック時の盟友キムテウク監督。彼の指揮のもと、作家、映像、照明など 素晴らしいスタッフが集まり、完成度を公演直前まで追い込むその姿勢には頭が下がりました、流石です。そして音響は長年のパートナーであるスターサウンド。昨年の国立劇場NEO UTOPIAに続き、今回も大々的にImmersive Soundを導入してくれ、演奏のミックスはもちろん、効果音に至るまで素晴らしい立体音響を聞かせてくれ通常コンサートとはまた違った演出に一役買ってくれた。

スタッフの皆さんにも大きな拍手を!!

 


 

コロナ後すべてのアーティストがそうだと思うけど、ぼくにとっても演奏する機会と場所が増え、更に新たに作った音楽を特別なライブで演奏できるのは、まさに幸せそのもの。そしてその険しい山を懸命に登った~10月でした。僕の曲でOctober’s Goneという曲があるけど、今振り返ってみると、まさにそんな気持ち。過ぎ去ってしまい、少し寂しい気持ち。でもまた会えるだろうな、そして再会の時は次の思惟;SAYUの曲を持って皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。客席から見た皆さん、本当に美しかった。いつも応援してくれる方たち、たくさんの応援ありがとう、そして海外からも来てくれた皆さんに心より感謝します。

 

そして、、今は11月18日オンエアのSBS、ドキュメンタリー総社記念ドキュメンタリークジラと私の音楽制作に没頭しています。また全然違うモードになっていて、 素晴らしい映像とストーリーに感銘受けながら懸命に頑張っています。こちらに関してはまた後日レポートしますので。急に寒くなってきました、皆さんくれぐれも気をつけてください。

それではまた。

 

梁邦彦