2023年7月1日北海道札幌、10&11日横浜&大阪ビルボード、15日韓国金海(キンヘ)Evolutionまでのライブ3回
#2 7月10&11日 横浜&大阪ビルボード
このところほぼ毎年ビルボードライブをやらせていただいていますが、今回は少し特別でした。素晴らしいテクニックと情感豊かな演奏で話題になっているクラシックギター界の新星、パクキュヒさんとの完全デュオライブ。パクキュヒさんと年齢は離れていますが、僕と共通点が多い稀有なミュージシャン。
ご両親が日本在住、幼少時から日本で育ち学び、 クラシックギターの教育も日本で受け、若くしてウィーンに7年間留学&音楽院を首席で卒業、戻った後は日本&韓国両方で盛んに活動している、いわゆるクラシック界のエリート。もちろん日本語も流暢で コミニケーションもバッチリ。そんなスペシャルなコラボレーションですが、 スタート当初は互いに少々戸惑うこともありました。と言うのは、彼女の活動する純粋クラシックギターと、僕が普段やっている音楽との接点&入口を探すのに時間がかかったのです。僕も今まで多彩なギタリストと共演してきましたが、いわゆる純粋なクラシックギターの方とはお初。その入り口を見つけるのに少々時間がかかりました。レパートリーを選ぶのにも通常とは違ったアプローチが必要、いわゆる既存曲のカバーもメロディーとコード譜からその場のインスピレーションで作り上げると言うわけにはいかず、ギターパートの既存スコアがあるものをベースとし、それを踏まえて大枠を僕が変えながら作り上げていくと言う手法をとりました。
いつものライブと違い、僕も多くを学びましたが、まずはナイロンギター(ガットギター)を使うクラシックギター世界の概念、そしてそのガットギターの世界でも領域が分かれていること。例えばフラメンコギターとクラシックギターとではその成り立ちや考え方が全く違う。フラメンコギターはその地域に根ざした伝統音楽が伝承されてきたもので、ほぼ譜面もなく師匠からの教え&音楽を体に染み込ませそれを次の世代に引き継いでいくのがメインストリーム。片やクラシックギターはしっかりと構成され作曲家が心血を注いで細かな部分まで譜面上に具現化し、それを奏者がどこまで解釈して演奏するかと言ういわゆる「クラシック」の世界でアプローチは全く逆。 同じ形状のギターでも両極と言っていいほどの違い。
多少の戸惑いはあったものの途中から要領も見えてきて、むしろそこにいつもと違った新鮮さと魅力を感じられるようになったのは、ソウルで初リハーサルをやったあたりから。 YouTubeにもたくさんアップされていますが彼女のギター、特にソロの演奏は本当に素晴らしく、デュオになった時それを壊さないように膨らませ、展開していくのが僕の役割ポイントとなるライブでした。さらに特筆すべきは、クラシックギター界のレパートリーとしては鉄板の「TANGO」。巨匠ピアソラに代表されるタンゴのレパートリーを今回取り入れることになり、僕も今回タンゴを初体験。独特の抑揚と情感の移り変わり、情熱と悲哀の交差するジャンルの素晴らしさを学んだ気がします。
そして今回レパートリー選曲にあたり、
ライブでほぼやったことのない僕のSong of Moonlight(ゲームAIONのOST)や、WHO I AM などはまさに新たなチャレンジ。そして原曲もガットギターで作ったサントラ「アゲイン」もぴったりハマったと思います。僕とキュヒさんでYouTubeを探しまくったあげく、本編最後に盛り上がる曲としてたどり着いたのが猪居 亜美(いのいあみ)さんと言う方の情熱大陸。スピード感溢れるその映像をキュヒさんに「こういう曲どう?」と送ったところ、彼女は「亜美さん大親友です、ぜひやりましょう!」と返信が来てやることになったり彼女にとって初チャレンジのポップス系ビートの曲をやったり、互いに色々模索しつつライブを作り上げていきました。そしてアンコールはあの大作曲家;武満徹さんがギター用にアレンジした「Yesterday」と、今回のライブ多彩な選曲になったと思いますが、いかがだったでしょう。以下にセットリストをあげておきます。
ーーーセットリストーーー
Gate of Dreams (Pf Solo)
Wish to Fly (Pf Solo)
Tango en Sky
Again Main theme
Alhambra의 추억 (アルハンブラの思い出) (Gt Solo)
Fuoco (Gt Solo)
Song of Moonlight
LiberTango
WHO I AM
情熱大陸
Yesterday
今年2月櫻井哲夫さんとスタートしたDuoと言うライブ形態、最近は 弦楽小編成だったり、ピアノでの小編成ライブを行ってきましたが、この真剣勝負&一輪挿しのようなデュオライブにとても魅力を感じています。ぜひこれを膨らませて日本、韓国でもいろんな形に広げていきたいと思っています。
足を運んでくださった皆さん、 ビルボードはじめスタッフの皆さんも本当にお疲れ様でした。おかげさまで楽しいライブなりました。キュヒさんとも含めこれからデュオライブ活発にやっていけたらと思っています。
梁邦彦