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済州島とJEJU FANTASY (JEJU MUSIC FESTIVAL)

  •  WRITER : admin
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    15-09-10 18:41  
済州島は父のふるさと。

父はいろいろな理由で彼の地を訪れることなく亡くなった。
晩年は本当に行きたかったのだろう、いつも故郷の話をしていて、それを聞くたび自分は「この話をする時のオヤジはどこか寂しそうだな」といつも感じていた。
彼は遠い故郷の景色や空気を次のように話して聞かせた、完全ループ状態で。「家の前の海岸が世界で一番美しい、風が爽やかで、空気が澄んでいて海鮮が美味しく、、」いつも全く同じ内容、そして僕達兄弟は刷り込まれた、もちろん行ったこともないのに。

父が他界した後の98年、初めて韓国に行くことになり、それならば当然済州島にまず行くべきだと、現地へ赴いた。
中文地域の海岸で5月の海風が自分の頬をなでたその瞬間、父の言っていたことがフラッシュバックして、それが現実となり体感できた。
「これか、、、オヤジの言っていたことは、本当に素晴らしいじゃないか」
その時出来上がった曲が「Prince of Cheju(Jeju)」。それ以降何度か演奏会もあり、事ある毎、済州島に足を運ぶようになった。

さて、Jeju Fantasyに話を向けよう。
★JF(Jeju Fantasy)2013
2013年に産声を上げたJeju Fantasy、事の発端は済州島MBCからの僕の野外コンサート(番組収録)の依頼だった。
話を聞いてみると、場所は野外、済州島道立交響楽団の共演が可能で、長さはフルコンサートと言う程度。要するにほぼ白紙の状態で2013年の1月に話が始まった。

初めの候補地は城山日出峰という世界遺産!そして次の候補地は稜線が美しい丘;竜目岳(ヨンヌニオルム)。共に素晴らしいロケーションだが、多くの人がそこに来た場合のインフラや環境保全団体からの意見も鑑みて、数カ所視察に赴いた結果、石文化公園が最適だということで意見が一致。元からステージが設置されているし、メインステージの他「空池ステージ」というなんとも魅力的なステージまであり、敷地面積は広大、将来それ以外にもステージ作ることも出来そうだし、とにかく様々な可能性を感じ、満場一致で決定した。4月末頃だったと思う。通り過ぎる風が心地よく、ここなら誰が来ても済州島の魅力をわかってもらえるだろう、申し分ないだろうと。

初のJF(Jeju Fantasy)は試行錯誤の連続。
参加アーティスト;日本からのミュージシャン(Dr;YAMADA WATARU山田亘, Bass;WATANABE HITOSHI渡辺等、Gt;FURUKAWA NOZOMI古川望)、済洲道立交響楽団、現地伝統打楽器チーム、海女さん30名
日本から参加してくれたバンドメンバーと交響楽団の呼吸も初めのうちは噛み合わず、とにかく本番まで夢中で突っ走り、気が付くとステージで演奏していたというのが本音、つまりそのくらい余裕がなかった。
JF2013では、とても印象深いことがあった。
この年の3月大統領就任式の公演を終えた直後、僕に海女博物館から新しい「海女の歌」を作って欲しいという連絡が来た。
その時は正直自分が作っていいものかどうか半信半疑だったが、海女博物館を訪れ、海女さんと面会し話を聞いていたら、これはやらなければいけないと思った。海女さんたちの歴史と彼女達の魅力が僕をそうさせたのかもしれない。
そこで、作るなら譜面を渡してハイ終わり、ではなんともそっけないというか、責任感ないなぁと思っていたところ、ある事を思いついた。「新しい海女の歌を本当の海女さん30人と済州島交響楽団でJFで初演すればイイ!」と考えたら本当に実現してしまった。海女さんたちの歌は決して専門家領域ではないが説得力に溢れ正に感動的、目頭が熱くなりながら演奏したことは記憶に新しい。そんな忘れられない初回JFだった。
 

★2回目のJF(Jeju Fantasy)2014
場所は同じく石文化公園。
参加アーティスト;クッカスタン、サウスカーニバル(スカバンド)、ラPercussion、日本からのミュージシャン(Dr;YAMADA WATARU山田亘, Bass;SAKURAI TETSUO櫻井哲夫、Gt;MATSUO KAZUHIRO松尾和博、Vln;TUCHIYA REIKO土屋玲子)、済洲道立交響楽団、済洲道立合唱団、伝統歌唱;アンスクソン、伝統楽器;ソグム>ハンチュンウン、テピョンソ>イ・ヨンウォン、etc… ステージ上の総人員;150名ほど!?の大規模ステージ。

この年から”フェスティバル形式”を模索しはじめた。2012~15年まで国立劇場で1ヶ月行われた「ヨウラックフェスティバル」の芸術監督を務めたことが大きく影響し、2013年JFを思い起こし「あんなに良い自然環境で音楽できるのは幸せなこと、他のアーティストにも是非体感してほしい」とフェスティバル形式の一歩を踏み出した年でもある。インフラや準備その他課題は目白押しだったが、将来上手く行った時の遠景がうっすら見えた、手応えのあるJF2014だった。
しかしこの時は気候が危うかった。朝から曇り空、チラホラと雨が降ったり降らなかったり。メイン公演直前も天気は怪しく、雨は降らなかったものの湿度は強烈に高く、オーケストラ団員たちが弦楽器をケースから出すのを渋る程度だったが、なんとか最後までクリア。しかし終演後15分、ステージ撤収開始直後に豪雨がやってきた!胃がキリキリと痛んだ。
ミュージシャン150名全員は舞台にのり切らないほど、規模は本当に大きく、雄大な自然の中素晴らしい機会を得ることが出来たと思う。
観客数も去年より格段に増え(前年度4000人>7000人!)アンスクソンさんの熱唱始め、参加アーティストの熱で十分に盛り上がったフェスとなった。





★そして今年JF(Jeju Fantasy)2015。3回目
参加アーティスト;歌手アルリ、サイケデリック・ロックバンド;クッカスタン、ラPercussion、ノルムマチ(創作伝統打楽器チーム)、キムソルチン(現代舞踏家)クォンソンヒ(歌手)に加え、日本からのミュージシャン(Dr;ISHIKAWA MASAHARU石川雅春、Bass;SAKURAI TETSUO櫻井哲夫、Gt;FURUKAWA NOZOMI古川望、Perc;YANAGIDA KENJI柳田謙二、Recorder & Ocarina;KANEKO KENJI金子健二、SAX;KAWASHIMA TAKAFUMIかわ島孝文、Trumpet;OZAWA ATSUSHI小沢厚、Trombone;OOHARA NOZOMI大原望、Violin;ODERA RINA小寺りな、Violin;BILMAN SHOHEIビルマン翔平、Vial;KIM HYOJIN金ヒョジン、Cello;IMAI KAORI今井香)オカリナ合奏団30名、漢拏児童合唱団15名と、世界を股にかけたアーティストから現地のプロ&アマチュア含めた方たちまで多岐にわたり参加してくれた。

今年はフェスとしての第一歩を正確に踏みだそうと考えた。本格的なフェスへの道、3年目にして大きな分岐点になるであろうと予測し、制作の済州島MBCと共に渾身の力を絞って制作にあたった。全体のトーン、参加アーティストの選考、入念にミーティングを重ね追い込んでいった。幸い素晴らしいアーティストたちが快く参加してくれ、自分でもこれは面白そうだと心躍る期待感というか、やはりこういうことは自分たち自らが楽しめなければいけなくて「これは面白そう、ワクワクする」となれば締めたもの、ほぼ結果は良いのが相場だ。
それともう一点、今年はオーケストラなしで行く事を早期に決めた。これは単純に雨天対策と楽曲変更時の機動力を考えた上でのこと。出演陣も多くなってくると、スコアの変更だけで目が回ってしまうことがあるが、今回は演奏やその内容に集中したいということもあり、去年は150名程度だった人員をコンパクトにまとめた。と言っても結局ステージ上に最多で50人以上いたことにはなるけど。

天候は味方してくれた。午前は曇りで雨雲も見え隠れて冴えなかったが、徐々に快方に向かい、ステージ上が空白の午後6~7時に一度通り雨が来た後は、美しい満月が観客と一体化、演出に大きく一役買ってくれた。特に空池ステージでの演奏時に見えた風情ある月の姿は今でも忘れられない。
今回は本編のラスト曲で、JF2015出演ミュージシャン全チームが再度ステージに登場、フェス的ムードが一気に盛り上がった。それはそうだ、だってお祭りなんだからね。

そして何より(これはいつも思うことなんだけど)ジャンルや国境、プロやアマチュアなど垣根を飛び越えて、楽しく演奏している人達の笑顔に代わるものはないなと。余計なことを考える隙がないくらい、ステージ上で幸せかもしれないと思うと、一気に疲れが吹っ飛ぶ。音楽は軽々と垣根を飛び越えてくれて、本当に良いもんだなぁと。

そんなことを改めて感じさせてくれた今年のJF2015、無事に楽しく終えられたこと、沢山の方に来ていただけたこと、多くのミュージシャン、スタッフの皆さんに心より感謝です(動員1万人を超えたフェスは済州島ではほぼ初めてという話も聞き、スタッフ一同嬉しくなった)。来年はJFからJMF(JEJU MUSIC FESTIVAL)に変身してお会いすることになるけれど、その準備はJF2015が終わったばかりの今既に始まっています。
毎年8月末に済州島の魅力&文化を「音楽を通じて」紹介しつつ、沢山の人達が心地よい音楽と環境を求め気軽に集まってくれる場所、それがJMF(JEJU MUSIC FESTIVAL)!となれるようしっかり努力していく所存です。皆さんの声援が大いなる力に繋がります、これからもどうぞよろしくお願いします。

それではJMF2016へ向かって、GO!

梁邦彦


その他の2015 JEJU FANTASY写真はこちら
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