2009年のTimeless Story以来、フルでの正規ソロアルバムは7枚目、前作からは6年ぶりとなる。
平素、映像作品やイベントなどの音楽製作やライブに追われ、どうしても自分のプロジェクトは順位として常に後ろに来てしまう(決して蔑(ないがし)ろにしているわけではないんだけど、現実として)。
昨年後半に行っていた一連のライブも一段落し、今年の初めには映像作品のOST2タイトル;映画「アゲイン」とアニメ「暁のヨナ」をリリース、次のステップに向かう準備が徐々に整ってきた所で、幸い劇伴&イベント関連製作作業に当てる時間に余裕が出来たので「よし今だ、それでは!」と一念発起した。今年後半は韓国でのライブツアーやヨーロッパでの重要なイベントもあり、その際は「ソロ名義の新曲」を持って是非ステージに上がりたい、いや上がらなければ、と思ったことが最大の理由。
いつも思うことだけれど、ソロアルバムは劇伴のための音楽ではなく、あくまでフォーカスは自分にあり、例えば今回のソロは「2015年、現在進行形の梁邦彦の等身大ポートレート」のようなものだと捉えている。今自分は何を考えているか?何に魅力を感じ、何処に行こうとしているのか?言いたいことは何なのか?という自分の根っこの部分に立ち戻り自問自答する毎日。そんなふうに考え始めると荷が重くなり始め、実際作業開始直後は目の前に立ちはだかる壮大で急峻な峰に挑みかかるような心境だったが、ここ最近はその登山口も過ぎ、3合目辺りを大地を踏みしめ着実に進んでおり、遠くに山頂の輪郭だけがうっすら見え始めた感じかな。作業を進めるたびその輪郭と色合いが少しづつ鮮明になってくるイメージ、まだぼんやりだけど。
この新アルバム、現時点で正式タイトルや細部までのイメージが決まっているわけではなく、その過程でいろんな経緯をたどって寄道をし、試行錯誤の末にようやく細部が見えてくるので先は長いのですが(残された製作時間は長くないけど)今回のアルバムの、現時点での漠然としたイメージ、方向。
「聞いてくれる皆さんの気持が軽く優しくなれるもの、そんな力になれるような音楽」
何かを乗り越える時そっと後ろから手を添えているような、さり気ない力になれたらと思う。
8月11日、ロンドンでLondon Symphony Orchestra(LSO)とレコーディングが決まっていて、今はそこで作業する曲をメインに作業進めている。ロンドンでのオケ録音も1997年からほぼ1年半おきに行っていて、LSOとは果たして何度目になるのだろう、彼らとのセッションが一番多いのは事実だけど。このようにロンドンでのオケレコーディングは自分の中で一つのroutine作業であり、目標でもあり、もちろん喜びでもあるので、これからも精進して良いアルバムを皆さんにお届けできるよう頑張りたいと思います。又追ってアルバム制作記、続編書いていきますので。
2015年8月2日
梁邦彦