去年の12月韓国でリリースし、今年の6月1日、日本盤の「Embrace」を正式にリリース。
韓国盤には「ジョンソンアリラン」、ウルチュ郡で今年から本格スタートする
「ウルチュ山岳映画祭」のメインテーマ曲「ウルチュオデッセイ」が収録されており、
日本盤はその代わり2020年までオンエアーのパラリンピック委員会(IPC)とWOWOWの
共同制作ドキュメンタリー「WHO I AM」のテーマ曲と、Whispering Colourと言う曲が
収録されている。
2009年にTimeless Storyをリリースして以来、6〜7年ぶりの「フル」ソロALBUM。
タイトルはEMBRACE。「抱擁」や「容認」という意味なんだけど、少し長く音楽を
やってきたことで、苦楽含め少しばかり色んな経験させてもらい、その結果生まれてくる
「今の」自分の音楽を素直にさらけ出し、そして受け入れると言う気持で作り上げた。
もう少しシリアスな言い方だと、自分や諸々の「運命」を受け入れ、それを優しく抱擁できたら、
と言うイメージ。
具体的にはここ数年、ソチオリンピック閉幕式やユネスコ70周年オープニング総会イベント、
素晴らしい劇伴など、意味あるイベントや製作に関与させていただく事によるアップした気分と、
それに反してオリガというあまりに親しいボーカリスト、14歳となった愛犬「Love君」、
アニメ「12国記」「英國戀物語:エマ」の小林常夫監督の早すぎる他界など、自分にとって
気持のアップダウン、揺れ幅が激しい時期を過ごしたことが作品に大きく影響した。
でも基本、トータルマインドはすこぶるポジティブで「皆、境界線超えて前に行こうぜ!」的
コンセプトがサブテーマでそれが2曲目「No Boudary」。
では各曲の簡単なイメージを。(ALBUM収録のコメントと共通部分もありますが)
1:Velvet Sanctuary
一遍の物語、Overtureとしての静謐な祈り、そして抱擁
2:No Boundary
境界線飛び越える事はそれ程大変なことではなくて、飛び出してみたらきっと、、、
さぁ一緒に行こうぜ!的、前方推進型ポジティブ志向のチューン。
3:Way Home
幼い夏の想い出、学校からの君との帰り道、校舎の遠景、気まぐれな影踏み。
頬の汚れも気にせず、遊びに没頭する少年2人。自分的にはアニメーション映像が目に
浮かぶのです。
4:EMBRACE
タイトル曲。
魂の奥底で静かに輝く記憶の「つづれおり」。
戻らない物、でもだから「かけがえのないもの」。
5:Lillies on a Cliff
断崖の片隅で、頑なに詩を詠い続ける一輪の百合。
虚ろな夢と儚い幻想の合間、悲しみの忘却。
フランス映画の様、という意見もありましたがどうだろう。
6:Journey to the Next Horizon
Next Horizonと言うキーワードがとても気に入り作った曲。
辿る旅の行程描写含め、トーン全体が健全なファンタジー作品になった気がする。
7:A Pessimist's Smile
微笑みのそこに揺らめく幾多の憂鬱。ときおり見え隠れする一筋の希望。
調性やメジャー、マイナー感含め、微妙に揺れる気持のX軸(時間軸)を切り取ってみた。
8:Voice from Aurora ~I can hear it even now~
オリガを失った事を知り暫くの間、自分の音楽が辿る道を見失った。
この曲の製作作業時、実際すぐとなりで歌っている気がした、というより
「その場で、本当に一緒に作り上げた」と思っている。
オーロラからの永遠なる歌声。オリガ、どうもありがとう。
9:Swan Yard ~Home Again~
2000年、PanoramaというALBUMのミックスでロンドンのSwan Yard Studioを訪れた。
Swan Yardという言葉に触発されすぐに作ったSwan Yardという楽曲を
今回もう一度作り直したくなった。
長く果てしない旅から戻ったSWANを迎える家族、彼と家族が霞たなびく湖上で過ごす安寧の時。
音楽的ストーリーとして8曲目から繋がっていると思っている。
10:The Promised Road ~to the Next Horizon~
まだ見ぬNext Horizonに繋がる、険しいけれど約束された道、君となら必ず行ける。
6曲目Journey to the Next Horizonと連作イメージ、健全なファンタジーの続編。
11:Whispering Colours
幾重にも織り込まれた色彩のアラベスク。
色彩たちがひっそりと、だけど奔放にささやいている。
12:WHO I AM (Original Theme of IPC ×WOWOW Paralympic Documentary Series “WHO I AM”)
パラリンピックという最高の舞台で活躍するアスリートたち。
彼らが見せてくれる「This is WHO I AM:これが俺たちだ」と言う姿は
自信に満ち溢れ輝いており、真に感動的。
彼らの持つ計り知れない大きな力がこの曲を作らせてくれた。
13:Jasmine Breeze
穏やかな、涼しい時間。
ちょっぴり切なく流れていくのが、また愛おしい。
こんな7枚目のソロALBUM「Embrace」。
素晴らしいミュージシャンの方たちによる、抜群のサポート無しで完成することは不可能だった。
毎回参加のロンドン・シンフォニー・オーケストラ(指揮はNick Ingman)&吉田宇宙ストリングス、
そして素晴らしいリズムセクション>櫻井哲夫さん(Bass)、古川望さん(Gt)、川口千里ちゃん(Drs)、
クリストファー・ハーディ−さん(Perc)、韓国のハーモニカ奏者ジョンジェドクさん、
はじめたくさんの方のご協力に心より感謝、どうもありがとう。
ALBUM全体のキーワードは3つでEMBRACE,No Boundary,Next Horizon。
今は無事に作り上げたという安堵感と、これからこの「子達と共に旅立つ」という期待感が共存
している。そう、これからライブで演奏して行く度、彼らは音源と違った形に姿をどんどん
変えていく。
そんな行程が創り手としてワクワクすると同時に、幸せな時間になっていくと思う。
これからこの子達と長い付き合いになりそうです、皆さんもどうぞ可愛がってあげてください。
梁邦彦