好きになる音楽は人さまざま。皆さんも、そしてもちろん僕も。演奏するミュージシャン達にも当然趣向があって、追い求めるものがみな違い、それがまた面白いのです。
ミュージシャンが好む音楽&アーティストは、ある意味とてもシンプルだと思う。「お、かっこいい!」「こうなりたい、これやりたい」が、殆どの理由&契機ではないかと思う、環境やその経緯はそれぞれ違うとしても。ただし、そういう経緯がない人もいる。物心付く前、幼少期からの英才教育を受け、気がついた時既に音楽やることが日常になっていた人たち。彼らは音楽が既にDNAに埋め込まれているのに対し僕たちのような後者は、大きなきっかけ;出会いにより音楽にとりつかれた人たちなのだと思う。
そして僕の周りには圧倒的にそういう人が多い。これってつまり多感な時期に「音楽の洗礼」を受けたということになるんだと思う。
で昨晩、古くからの音楽仲間のこと考えながら、彼はこういうの好きだよな~とかYOUTUBE巡りをしていたら、自分自身が洗礼を受けた音楽に出会ってどんどん抜けられなくなり、つい夜ふかしをしてしまった。抜けられなくなったその理由。その音楽は平時殆ど聞かないので、久しぶり>本当に何十年振りに接触したので当然新鮮だった。でもそれは自分が洗礼を受けた事への懐かしさではなく、今聞いても素晴らしいのはもちろん、それ以降もライブやいろんなバージョンで進化し続けている様子、更には自分たちだけでなくジャンルを飛び越えた他のミュージシャンたちが伝承していく姿が感動的だったから。
僕が昨日出会った音楽の洗礼曲はLed Zeppelinの「Kashmir」(もちろん他にもあるけど、、、今日はこれを紹介^^)
天才集団Led Zeppelinは誰もが知るロックバンド。唯一無比のボーカル:Robert Plant、ロックドラムの神:John Bohnam、サウンドの要:ベースのJohn Paul Jones、彼はHammond OrganやMellotronなどのKeyboardも担当した。そして何より作曲とプロデュースを担当しているGuitar : Jimmy Page、彼の音楽性の広さと言ったらそれは一言では語り尽くせない。
王道のRock’ Rollはもちろん、ブルース色をハードに感動的に仕上げた「Since I've Been Loving You」やMandolinなどを駆使したIrish Trad的アプローチの
★「The Battle Of Evermore 」
https://www.youtube.com/watch?v=4axrTFBV3cU
ここではTriple Necked Mandolin弾いてる^^;
ギターの音色も独特でその奏法や楽曲アレンジのアプローチも他とは明らかに一線を画している。YouTube1994年のライブ映像がめっちゃ感動的、上記の曲たちをやっているんだけど、オリジナルを更にパワーアップしたものすごいステージ。きっと円熟期だったのだろうな。ただ一つ惜しいのはドラムのJohnはもちろん他界してしまっていること。
★Since I've Been Loving You - Jimmy Page & Robert Plant
https://www.youtube.com/watch?v=wZEwimJ3GZE
このブルース的アプローチとバンドのHardnessの共存、そして独特なボーカルRobert Plant、更に大人数の弦楽器がそれを包んでいる姿がめっちゃ素晴らしい。
さて問題のKasimihr、原曲ライブはこちら。1979年Zeppelinの最盛期、ドラムはJohn Bohnamですごすぎる。
★Led Zeppelin - Kashmir (Live at Knebworth 1979) (Official Video)
https://www.youtube.com/watch?v=hW_WLxseq0o
CDではアルバムPhysical Graphityに収録。Physical Graphityリリースは高校入学と同時だった。ロックを軸としながらも多種多様な楽曲が並んでいたけど、そこでKasimihrを聞いた時、なんだかわからずだけれど、正直ぶっ飛んだ。好きな曲として聴き続けて染み込んでいった。ロバート・プラントは実際トールキンの『指輪物語』に大きく影響を受けるなど、彼の詩はファンタジックでしかもぶっ飛んでいる。カシミールもその例にもれずだが、あるインタビューでカシミールはかなりの自信作で気に入っているとコメントしている。余談だけど、前回このブログでトールキンの指輪物語の映画(音楽)についても話したので、これは僕も意外、とても面白いつながりだと思う。
この曲、音楽的には変拍子もふんだんに取り入れ、エスニック;異国情緒あふれるかなり凝った作りになっているが、一見(一聴)難しい超絶技巧フレーズが連発されるのではなく難しそうでもない。しかし理知的な仕掛けと構成がその完成度を高めていて、そこが又個人的にたまらない。今聞いてもほれぼれとするし、よくギタリストがこんな曲書いたなぁと改めて驚く。(ギタリストに対する偏見ではなく、普通のギタリストが作る曲とは大きくかけ離れているという話)ジョン・ボーナムのどっしりと重いビートの上にジミーペイジの緻密だけど大枠なギターと音楽のドラマティックな構成、ジョン・ポール・ジョーンズの皆を繋ぎ止めるベースとキーボード、その上に自由溌剌プラントの個性あふれるボーカルとあの詩。もうこれは彼ら以外作り出すことは不可能な次元に到達していると思う。この辺はアルバムバージョン聞いてもらうとその繊細な部分が際立つと思う。
そして、圧巻がこの1994年ライブでのKasimihr。この頃にはLed Zeppは解散しユニット名がPage & Plantになっており、バンド以外の共演者はthe Egyptian Ensemble and the London Metropolitan Orchestra
https://www.youtube.com/watch?v=bzEYNsFC2gE
実はこのライブ、95年ころに何かのメディアで見たんだけど、その当時ちょうど自分がソロデビューし、アイリッシュやアジア含めたワールドミュージック的視野も持つようになった上で1970年代以降このカシミールと「再会」した。アルバムには収録されていない中東の Egyptian OrchestraとLondon Metropolitan Orchestraと共演が最大の見せ場。大本のロックという軸はブレずに中東音楽やオーケストラとの共存、ZEPPの解散後こんなに進化していたことに驚く。
ちなみにこのPercussionはHOSSAM RAMZY:ホッサム・ラムジーで紛れもなく中東打楽器の第一人者。僕のライブでいつもChristopher Hardy君が演奏するFrame DrumやDrbukkaを皆で叩いている。そして中東音楽の最大の魅力特徴がクォータートーン;いわゆる1/4音;半音のまた半分の音程で変化する音階;スケール。ここでもバイオリンソロでクォータートーンがふんだんに盛り込まれて盛り上がり、挙げ句はロバート・プラントがクォータートーンで歌い出す始末。かっこよすぎで椅子からずり落ちた。笑 しかしこの人達の進化はこういう形なんだなぁ、飛び越えてる感半端ない。
このthe Egyptian Ensemble and the London Metropolitan OrchestraとのKasimihrは今の自分にも大きく影響受けたと思う。ジャンル飛び越えたこんなコラボって可能なんだ?!と自分に言い聞かせて、そして今に至っていると思う。
そしておまけ:誰もが知っている彼らの超代表曲「天国への階段」
オバマ大統領出席、錚々たるミュージシャンたちが本人たちに捧げた名曲の数々、ラストの「天国への階段」はアメリカ的「ヤラセ感」ありすぎだけど、やっぱり感動的。それにしても本人たち嬉しいだろうな。客席で聴く3人のかっこいい姿が印象的。
https://www.youtube.com/watch?v=ra-itTKnFaw
このLed Zeppelinの例は、正にセルフカバーの進化形だと思う。
そしてもうひとり:Tom York トム・ヨーク 言わずとしれたRadio Headのリーダー&ボーカルで作曲やプロデュースも担当。
Radio HeadはCreepと言う曲がメガヒットしたおかげで(せいで)世界中のバンドがあのイントロを真似した経緯があるんだけど、今回そこに触れるのではないのです。もちろんあの曲はライブで死ぬほど盛り上がりますが^^;
正直レディヘはリアルタイムではなく、ちょっと後追い。アルバムもすべて後追いで聴いていたんだけど、大きな転機は2008年埼玉スーパーアリーナでの彼らの初ライブ遭遇。
ちょっと音質は悪いけど、汗 コロナ影響のもとで彼らの意思で特別公開したそうだ。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=7&v=RzximgL9Ik0&feature=emb_logo
大好きなアルバム「in Rainbow」リリース直後の彼らは凄まじかった。音量はそれ程ハードなわけでもなく、圧倒するライブと言うより、一曲一曲、その良さが沁み渡ってくるコンサート、そして特筆すべきは照明や美術、映像の一体コンセプト感、正面中央ステージ上に降りてきたクリスタルに映し出される照明。この2008年生ライブ体験は大きな衝撃だった。そして次は2016年サマーソニックのヘッドライナー。待ちに待って久しぶりの再会に正直嬉しかった。本番当日彼らのスタート直前、入場規制ではちきれそうにマリンスタジアムは気持ち悪いほど静まりかえっていた。もちろん関係者たちもピリピリ。この独特の緊張感が正に彼らの雰囲気。静かに待ち、スタートとともに炸裂。
具体的に一番好きな曲は「Exit Music」初めて聞いた時、その美しさに戸惑った。
なんと言う和声感&和声進行なんだろう、不思議で、でも美しく、悲しくそして漂っていく。まるで現実ではないような。
世界中の、色んなジャンルのミュージシャンが彼らのカバーをしていて、実は最近それを見たときにも先述のZEPPと形態は違うけど、同じ「影響力」の強さを感じます。ヒットチューンではない、>>キャッチーなサビと歌詞でグイグイではないんだけど、こういう音楽をこういう風に慕って集う人やミュージシャンがこれだけ多いことに、感動を覚える。
★Radiohead - Exit Music オリジナルです、
https://www.youtube.com/watch?v=FapBH3j6WoA
2017Glastonbury フェスでのライブ
https://www.youtube.com/watch?v=16izdtkzEz8
ドイツケルンの合唱団。楽曲の良さが伝わってくる。本当にいい曲、涙。
https://www.youtube.com/watch?v=_Ovv95fzSNU
Jazz Pianist Brad Mehldauのカバー
https://www.youtube.com/watch?v=Mm-pBjBp4OA
こちらも合唱 アレンジが素晴らしい。少し演劇的要素あり。
https://www.youtube.com/watch?v=WsGFpcL9Nbg
オリジナルに近い
https://www.youtube.com/watch?v=wD-zz1hMkbQ
弦カル 心に沁みてくる。
https://www.youtube.com/watch?v=cFT_DEZWxBk
もう一曲 ★Radiohead - Weird Fishes オリジナル ずっと続くこの音形がミニマル・ミュージック的で皆が取り上げる要素かな。
https://www.youtube.com/watch?v=ejdZEe4Rd0o
Lianne La Havasと言うアーティストがカバー。センス良い!
https://www.youtube.com/watch?v=AHeW8McMBS8&app=desktop
知らないバンドだけど明らかに中東要素あり。中盤以降、民族色入って結構イケてます。この曲は中盤部以降が盛り上がるのです。
Radiohead - Weird Fishes /Arpeggi (Kutsal Kaan Bilgin Cover)
https://www.youtube.com/watch?v=voXHDgpe7Gw&app=desktop
弦5重奏
https://www.youtube.com/watch?v=BpRHW45ZVns
これなんぞ、オケの若い人たち、きっとアマチュアなんだろうな。イントロは練習必要だけど、後半からはやっぱり良い。熱意が伝わってくる。
Radiohead - Weird Fishes (Orchestral) Kasper van Dijk - Ensembleweek ODM Utrecht
https://www.youtube.com/watch?v=XmjcuFY6W0g&app=desktop
Radio Headはこの他にもたくさんカバーされていて、楽しめるので皆さんも是非色々と探してみてはどうでしょう。
ジミーペイジとトムヨークの共通している印象は、クリエイター&アーティストとして「よくこんな曲、こんな音楽作り出せるな!」。彼らはなにか別の次元、別の空間に生息しているような、現実感のわかない遠い存在のイメージです。他のミュージシャンによるカバー演奏は、原曲から離れていく感じが面白いし、ましてやセルフカバーはその作った本人の音楽が更に進化していく過程のようなもので、更に興味深いと思ってます。
彼らの音楽にパワーを貰いながらCORONAの疲弊しきった「モヤモヤ」した気持が吹き飛ばして、さぁ頑張ろう~~^^
梁邦彦