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EBS「アーティストのBOOK国旅」

  •  WRITER : admin
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    18-08-08 18:38  


先日EBS の「アーティストのBOOK国旅」と言う番組に出演した。

この番組の趣旨はクリエーター、アーティストたちが影響を受けた5冊の本を紹介し、それを自分の創作や生き様にどのように反映、活用してきたのかを探るもので、その事によってアーティストの内面を探っていくという、文面にすると多少大仰なイメージだけど、そのアウトラインが明るく楽しく作られ、とても印象深い番組でした。

 

オンエアー当日は日本にいて生では放送見れなかったけど、後でここで視聴できました。^^
http://www.ebs.co.kr/tv/show?courseId=10033424&stepId=10037160&lectId=10928192


ではその5冊を僕から簡単に紹介しておきます。

 


 

1. 「おかぁさんは海女です」 コ・ヒヨン
一昨年参加した済州島海女さんのドキュメンタリー映画「ムルスム」の監督、コ・ヒヨンさん著の絵本。絵はスペインの作家Eva Armisénさん。この二人が済州島の海女さんを巡ってたくさんコラボしているのですが、これがまたいいのです。海女さんの生活を温かい視点で、リリカルに描いた素晴らしい絵本。ときにはシリアスな海女さんと自然との関係、運命も含め子供たちにもぜひ伝えていきたい作品で、超オススメ・

 


 

2. 「今日は死ぬのにもってこいの日」 Nancy Wood
これは30代から読み始め、40代まで事ある毎に何度も読み続けた本。
Native American達が長い時間をかけ育んできた自然との関係。それは哲学であり、生きる道標でもあり、人生の叙事詩でもある。眼前に広がる自然をモチーフに、平易な言葉の断片から深淵で広大な美学を紡ぎ出した大好きな本。気持ちが揺れ動いた時、何度この「詩」に背中を押してもらったことか。そう言えば、東京を離れ軽井沢の山中に定住を決めたのは、これを読んだ後だった。

 


 

3. 「単純な脳、複雑な私」池谷裕二 
東京大学薬学部教授池谷裕二氏が、出身母校で行った連続講義;若き聴講者に対する講義を収録したもの。私たちがふだん抱く「心」のイメージ、「生命」「心」「自由」などは脳のシンプルな機能から産み出されたものに過ぎず、我々は必要以上に、それを神秘的に考えてしまう、など。個人的には芸術や創造というものが、普段の神経経路からたまたまを道を外れた際に起こるという部分。僕はそれを勝手に「NOIZ」と解釈してみたら、面白いイメージがどんどん湧いてきた。NOIZがあるから普段と違うこと思いつき、違った方に進んでいく、これが面白いんだよなぁとかね ^^ それが人間の想像力の偉大さなのか、いやでもそれは僕が必要以上に神秘的に考えてしまっているのか?など、きりがないけど面白い。

 


 

4. 「十二国記」小野不由美
NHK-BSでオンエアーされた僕の音楽アニメーションデビュー作。日本はもちろん、中国、韓国、そしてヨーロッパ、北米まで、多くのファンを持つ作品で、特筆すべきはこの原作の持っている力。小野不由美さんの描く、壮大で緻密、かつ美しく幻想的な「十二国記」という世界は唯一無比。正直この作品以降、類似したアニメーション作品が多数発表されたほどこのジャンルで圧倒的な影響力を持つ作品。個人的には麒麟と楽俊という登場キャラが好き^^

 




5. 「職業としての小説家」村上春樹
これは村上氏に世界中のファンから寄せられる、「どういう風に小説を書いたら良いのか」に答えるべく、多くの問いに文章で答えたもの。彼の創作に対する姿勢や考え方、ライフスタイルまでを細かく話してくれている。具体的にはデビュー当初から今に至るまでの経緯、日本の文学界で迫害され自由な創作環境を求め海外へ移り、それでも揺れ惑うことなく自分の道を歩む、そんな彼の後ろ姿は自分にとって大きな励みになっています。本当に強靭な人だと思う。

 


 

とまぁ、それぞれの本についてちょっと堅苦しい話をしたけど、この番組の一番のポイントは演出&構成が楽しいということ。この手の番組は、語り手の個人的主張がどんどん先走りして、聞く側の意識が離れていってしまうことが多いけど、この番組は全然飽きさせない。具体的には、僕が自分で書いたラフな漫画のキャラクター;ネズミが大活躍。彼がキーボードを抱え飛び回ったり、スタジオで一生懸命作曲している姿など、その演出が楽しい。そして作品ごとの登場人物のキャラクターもアニメーション化し、僕の話をわかりやすく説明してくれたり、、、。

そして撮影の合間、撮影スタッフと交わした楽しい会話をさり気なく挿入していたり、ときに僕の韓国語が分かりづらいときも、アニメくん達がさり気なくアシストしてくれていたり、飽きさせずに楽しい雰囲気が続くよう細かく配慮され、かつ内容の薄くならない素晴らしい番組だったのではないかな。こういう番組への参加は本当に楽しく、意味あるものだった。晴らしいスタッフの皆さん、お疲れ様でした!

梁邦彦

 

 

P.S この番組オンエアー時、僕が韓国の検索エンジンDAUMで2位、十二国記が5位!と、想定外の反応でした。どうもありがとう!